大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)817号 判決
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〔判決理由〕第二、責任原因
一、被告会社が加害車の所有者である事実は当事者間に争いがない。
二、被告金が被告会社の被用者である事実も当事者間に争いがないところ、被告会社は、本件事故は被告会社方の運転手ではない者による無断運転中に発生したものである旨の主張をするので考えてみるに、<証拠>によれば、被告金は昭和四三年春頃より被告会社に工員として勤務し、被告会社の寮に住込んでいたところ、自動車運転に興味を覚え、無資格のまましばしば被告会社の自動車を運転するようになり、本件事故前にも二回ほど警察官に発見され家庭裁判所で処分を受けたこともあり、昭和四四年二月中旬頃には西成警察署において検挙され、被告会社代表者やその妻および被告金の上司らから自動車運転をしないよう強く注意を受けていたが、事故当日、本件加害車が被告会社裏の道路上に駐車してあり同車専属の運転手が所用のため外出して同車に鍵がついたままになつていたため、被告金において運転練習のため、同車を無断で乗り出したものであることが認められる。
三、ところで、自賠法第三条にいう「運行」とは、当該運行が客観的、外形的にみて当該自動車の保有者の支配に属すると認めうる場合をいうものと解するのが相当であるところ、右認定の事実によれば、被告会社の被用者である被告金がしばしば被告会社所有の自動車を無資格で運転していたのに、加害車を鍵のついたまま被告会社裏の道路上に駐車しておくというずさんな被告会社の自動車保管状況のため、本件加害車が運行の用に供されたものというべきであるから、このような場合、加害車の右の運行には、被告会社の支配が及んでいたものと認めるのが相当である。被告金昭本人は、被告会社事務室のひきだしの中にあつた本件加害車の鍵を持ち出して運転したものであると供述するが、右は前記認定の事実に照してたやすく措信しがたいけれども、仮りにそのとおりであつたとしても、無免許の者が容易に自動車の鍵を持ち出せるような状態にしておいたことじたいが、日頃自動車の鍵の保管について不注意、不行届であつたことの証左であり、右の結論を左右するものではない。また、被告会社代表者吉田剛本人は被告会社所有の自動車の保管を厳重にし、専属の運転手以外は容易に乗り出すことのないように注意を怠らなかつた旨の証言をするが、右は前記認定の事実に照してたやすく措信しがたい。
四、以上のとおり被告会社と被告金との雇傭関係、日常の自動車の管理状況等からすれば、本件事故当時の加害車の運行は、被告会社のためにする運行と認めるのが相当であるから、被告会社は、自賠法第三条により本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。(吉崎直弥)